「勝者のヒントとコツ」シリーズでは、「Cartoon Animator コンテスト 2022」の受賞者が共有する実用的なワークフローとテクニックを取り上げます。ユーザーが Cartoon Animator パイプラインの全範囲を確認できるようにするために、コミュニティから注目と評価を得たプロジェクトを紹介しています。それでは、杉原健善の「はらぺこさんてんし」を見て、彼が Reallusion Cartoon Animator(CTA)でどのように魔法を働かせるか見てみましょう。
杉原健善 略歴

私が小学生の時に出会ったプロレス漫画に「キン肉マン」という少年漫画のキャラクターがいるのですが、私はその漫画に出てくるキャラクターをいつも模写していました。その漫画はいまも連載を続けており、多くの漫画家や格闘家に多大な影響を与えています。私自身も、将来は漫画家になるんだと思っていた時期もありました。
22 歳の時に代々木アニメーション学院のビジュアルイラスト科に入りました。 暫く絵を描くことから離れていた私にとって、とても刺激的な 2 年間でした。そのころは、パステル画で猫の絵ばかり描いていました。同時に、いまの作風につながるイラストも少し描いていました。少しずつ絵本のようにストーリー付きのイラストも描いていくようになり、出版には至りません でしたが、絵本も描いていきました。
その当時はすべて手描きだったのですが、私自身が生まれつき赤緑色盲であったことから(例えば人間の顔を緑色で塗ったりしていました。)手描きの限界を感じていて、パソコンでの制作をするようになっていきました。単体でのイラスト制作よりもストーリーのあるものを作りたい。そう思うようになったのは自然な流れでした。漫画家にはなれませんでしたが、Cartoon Animator を使えるようになったことで、子供の頃の夢が叶ったといえます。元々が朝型の人間なので、会社に行く前の 2 時間程度を制作の時間にあてています。帰宅後や土日の制作に加えて、日本人の動画クリエイターとの交流や映像大会などのイベントの参加も大きな成長の要因と言えます。
なぜこのトピックをエントリとして選んだのですか?
シングルマザーだった私の母は、10 年以上住み込みで高校野球の寮母をしていました。そんな母の仕事をする姿を見て育った私は、エプロン姿のお母さんのキャラクターを早いうちに描くようになっていました。生まれ故郷の島を舞台に楽しく仲良く暮らしている姿を描きたかったというのは、私の憧れでもあります。
このアニメのタイトルである「はらぺこさんてんし」は 10 年以上前からその名前を思いついていました。それは仲の良い友人 3 人と食事を作る機会が何度もあったからです。買い物に行って、エプロンをつけて、時々失敗して…そんな経験もこの作品制作には役に立っていました。キャラクターデザインは何度か変わりましたが、今の形で落ち着きました。
制作ツールとして Cartoon Animator を選んだ理由は何ですか?
CTA の他にいろいろなアニメーションソフトがありましたが、アニメーションの制作経験がない当時の私にとっては、簡単で視覚的に分かりやすい操作画面と、アクター用のアニメーションをクリックするだけで適用できるというのは魅力的にうつりました。

Cartoon Animator の使用方法
ステップ 1:スクリプトとストーリーボード
今回は BGM と歌に合わせてキャラクターが動くアニメーションにしたかったので、まずは絵コンテをかきました。その中で、どんな歌詞になるかを書き出していきました。好きな曲調のものを何曲かピックアップしておいて、歌詞とテンポが合うかどうかを歌いながら テストしていきました。最終的に歌詞を調整したら、歌手の方に依頼して歌ってもらい、歌が上がってくるまでは私が自 分で歌ったものでタイミングや振り付けをあわせました。

ステップ 2:キャラクター作成 / スケッチ
「はらぺこさんてんし」の作画にあたっては、以前描いていたキャラクターを CTA 用に加工してい きました。私が新しいアクターを制作する時 CTA の既存のアクターを利用して、CLIPSTUDIO 上で画像の入れ替えをして制作しています。特に、既存のアクターからは多くを学べるので、アクターがどのような構造になっているのかは同じような要素のアクターを作る時には参照しています。

アクターの腕の作り方には注意しています。それは、私が作る多くのアクターは 2 頭身、3 頭身のものが多く、首が見えないデザインになることもあります。アクターのアニメーションをする際に、各体のパーツのレイヤーの順番と骨格上ありえない形で肩や肘が動かないかは注意して制作しています。

そして、衣服の着脱は基本的には同じアクターではできないので、必要なアクターの向き(0 度、 45 度)がいくつ必要なのかも把握しておく必要があります。

ただし三角巾については、タイムライン上で可視化・非可視化の制御ができるので、その分はアクターを増やさずに済みました。

ステップ 3:キャラクターとスプライトのアニメーション
歌詞にあわせて動かすため、コンテンツ内のダンスのアニメーションの中から色々と適用させて、実際にアクターが動く姿を見てイメージに合うものを探していきました。多くの場合はすでにあるアニメーションをアクターに適用させました。また、マーケットプレイスで購入したものも活躍しています。

その後、アクターのアニメーションの速さ(タイムライン上のクリップの長さ)を調整して、必要であれば、「モーションクリップをサンプリング」でクリップを分解して、動きをアレンジしていきました。

ステップ 4:シーンの作成と構成とカメラの設定
シーンの作成は主に、曲にあわせて場面転換するところで区切りました。最初に作った絵コンテとは大きく変わったところもありました。

本来は天使が水道で手を洗うという絵コンテでした。そのための画像素材も作ってはいましたが、画面が忙しく切り替わるのが嫌だったので石けんの泡を洗い流すアニメーションに切り替えました。

ステップ 5:BGM の選択、サウンド VFX & 声優
BGM は作る人の好みによっては後で選ぶという人もいるかもしれませんが、今回は楽曲に合 わせてアニメーションを動かすという内容だったので、楽しく料理を作ることがイメージできる ものを選びました。After Effects で影と光と空気感をつけました。Shadow+Studio+2 を使ったので、非常に簡単にライトを当てることができました。


Cartoon Animator (CTA) は、習熟しやすさと生産性の両方を考慮して設計された 2D アニメーションソフトウェアです。画像をアニメーションキャラクターに変換したり、あなた自身の表情を使ってキャラクターをコントロールしたり、 音声に基づいてリップシンクアニメーションを生成したりできます。
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